レトロ印刷のこと
「版ズレ」「かすれ」「色ムラ」「混色」「インク落ち」…
一般的な印刷では良くないとされる部分に、ときめくのがレトロ印刷です。
レトロ印刷って、なに?
レトロ印刷は、「デジタル孔版印刷機(リソグラフ)」での印刷を専門とする印刷所です。
孔版印刷とは、シルクスクリーンのように版に孔(あな)をあけて、そこからインクを押し出して印刷する印刷方法です。
1色ごとに版を作って重ね刷りするため、ランダムに版ズレが起きたり、インクの濃度や紙の組み合わせによっては独特のかすれやムラが出たりと、1枚ごとに手刷りしたような味わいのある仕上がりになります。
リソグラフの仕組み
印刷の元となる「版」を、インクドラムに巻きつけて印刷を行います。「版」は薄いフィルムと和紙を貼り合わせたもので、印刷データに基づいて無数の小さな孔(あな)を開け、ドラムの回転とともに孔からインクを押し出すことで、紙に図柄が印刷されます。
入稿データはインクで分ける
リソグラフ印刷は、版画のように1色ずつ重ね刷りするため、使うインクごとに版を分けて作成し、モノクロ、またはグレースケールで入稿します。
版を分けるのは手間ですが、一度データを作れば簡単にインクを変えて印刷ができるのも、リソグラフの魅力のひとつです。
入稿データの作り方選んで楽しいインクがたくさん
リソグラフ印刷は、フルカラー印刷ではありません。
CMYK(シアン・マゼンタ・イエロー・墨)の掛け合わせで色を表現するのではなく、直接その色のインクで印刷するため、発色がクリアです。紙にインクを直接のせたようなマットな質感は、懐かしくて温かみがあります。
オフセット印刷では特色料金となる蛍光やパステルインクも、レトロ印刷では通常のインクと同じ価格で使うことができます。(※金インクのみ価格が異なります。)
レトロ印刷のインクどうして
印刷がズレるの?
ちょっと頼りない印刷の版
レトロ印刷の大きな特徴である「ランダムな版ズレ」は、どうして起こるのでしょうか?
印刷の元となる「版」は和紙とフィルムを貼り合わせた薄い素材となっており、紙にインクを転写する工程を行うときに、インクの粘度や版に紙が当たる衝撃などで版がわずかに動いてしまうため、1枚印刷するごとに版ズレが起こります。
また、印刷する図案によってインクの通り道である版の孔の数が変わります。孔がたくさん開いている版はひっぱりに弱いため伸びやすく、孔の少ない版は伸びにくなります。この微妙な差によってもズレが生じます。
インクを吸って紙が変形
面積や濃度による違いはありますが、インクの水分を吸って紙自体も微妙に変形しています。特に全面に濃いベタがあるようなデザインでは紙がインクをたっぷり吸うため、ズレが起こりやすくなります。
ムラになったり。
かすれたり、
手描き原稿とも相性ヨシ
レトロ印刷のリソグラフでは、「エマルジョンインク」という「油分」「水分」「顔料」などが合わさった半水性インクを使用しています。
印刷するとインク内の油と水は分離し、やがて水分が蒸発して油分の一部と顔料が紙の表面に残ります。水分を紙にしみ込ませて印刷するため、わずかに印刷部分の輪郭がにじんだり、版から紙がはがれるときにムラが出来たり、粗めの紙はインクが均一に乗らずにかすれが生じます。
印刷がくっきりしすぎないので、水彩や鉛筆などアナログタッチの原稿と相性は抜群です。もちろんデジタルで作ったイラストも、独特の風合いのある仕上がりとなります。
混色したり、
手についたり。
混色を楽しもう
インク同士が重なる部分は、水彩絵の具のように混色します。「蛍光ピンクと水色を重ねてちょっと明るい紫」や「黄色と水色で緑インクよりポップな緑」など、混色でしか表現できない絶妙な色があります。
インクの明暗や濃淡によって混色の具合は変わりますが(たとえば100%の黒や濃紺は、あまり他のインクの影響を受けません)、混色を避けたい場合は、デザイン同士が重なり合う部分を「白抜き」で隠すなどの工夫が必要です。同じように、紙の色もインクの発色に影響します。